この著者にしてこの書あり

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この著者にしてこの書あり11
山男は歩き、見て、考えた

 

大谷和男 『上海駐在員が歩いた中国』

著者大谷和男さんは、一昨年『千島列島の山を目指して』を出版されたときお会いした。
日本国内のみならずカムチャッカ半島や千島列島の山にも足跡をしるす大谷さんは、
背が高く頑丈そうだが物静かで、山男らしい強い意志を秘めた方のようにお見受けした。
そのとき、「会社の仕事で中国に赴任中で、一時帰国」しているとのことだったが、
2008年4月に3年3ヵ月にわたる中国駐在を終え、書き上げられたのが本書。

「本当は山旅の本を書きたかった」と、はじめにに述べられているが、
本書のサブタイトルは「登山、日本軍の痕跡、上海及びその周辺の田舎」であり、
本格的な登山は、四川省の四姑娘山連峰と、青海省のチーリェンシャンレンロン山脈の
ガンシェンカ雪峰付近の5000メートル級の山に出掛けた2回のみ。
他は上海周辺の水郷めぐりや、旧日本軍の上陸地点や抗日記念館などを訪ねる「重い」経験、そして上海からはるか離れたチベットや新疆ウイグル自治区や雲南省への旅、
3年間で見聞きした事実をもとに中国を考察する文章からなっている。

本書を特徴づけているのは、単なる旅行者としてではなく、ビジネスマンとして仕事を通じて現地の人と接した経験が率直に語られていること、
本多勝一氏の本などから得た知識をもとに、目を塞ぐことなく日本軍の行動の跡を追われていること、
日本人がまだあまり入っていないような5000メートル級の山以外に、上海周辺の100メートルほどの山にも出掛けるほか、水郷の街にもてくてく歩いて出向いておられること、などなどまさに“虫の眼”で上海という街、中国という国を観ておられることだ。
2005年の反日暴動、2008年の農薬入り餃子事件などを目の当たりにした大谷さんは、
本書のあとがきにも書かれているが、中国在住中は、「もう共産党の支配する中国はこりごりだ」と思いながら、「しかしここは冷静に考えなければならない。これから中国がどうなるかは地球全体に関わることである。地球環境問題、化石燃料枯渇問題」「民族間の対立などの問題」に、中国がリーダー的な存在になって貰いたいと言う。
本書からは伝わって来るのは、複雑な思いを抱きながらも「特別な存在」となった中国に対して、率直にものを言おうとする大谷さんの姿勢と、歴史に疎い(すぐに忘れる?)日本人に対する強い危惧の念である。

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