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出版取次の役割と仕組みについて

日本の出版業界には取次という仕組みがあり、出版業務がスムーズに行われています。では、取次とはどのようなものでしょうか。また、なぜこのような仕組みが生まれたのでしょうか。取次はどのような役割をしているのか、取次がないとどうなるのかなど、取次について調べてみました。

出版取次はなぜあまり知られていないのか?


取次は出版業界になくてはならない仕組みですが、あまり一般には知られていません。それは、多くの人が出版業界の仕事の流れを知らないから、取次についてもよくわからないのです。まず、本は返品可能な商品なのですが、この点が他の商品と大きく違います。

本以外のほとんどの商品は、一度仕入れたら不良品でない限り、返品することはできません。しかし、本だけは書店が仕入れても、売れ残ったら出版社に返品できるのです。このため、出版社は本の注文があったからといって、その分が全部売り上げになるとは限らないのです。

100冊のうち10冊返品なら売れたのは90冊となります。普通の商品なら100個売れたら100個分すべてが売り上げとして計上できますが、本はそうではないのです。このように、流通の仕組みが通常の商品とまるで違うために、取次という独特の仲介業者が必要となるのです。

取次は本を卸す問屋で、本はこの問屋を通して全国の書店に運ばれます。昔からある大手の出版社は、それぞれ専用の取次店を持っていて、本の卸と返品処理を依頼しています。前述しましたように本は返品可能な商品ですから、それを一手に引き受けてくれる取次店は、書店にとってなくてはならない存在なのです。

出版取次の具体的な事業・業務内容


本は作者が執筆し、出版社が印刷すれば自動的に書店に並ぶわけではありません。本は書店から注文が入ってはじめて配送され、書店に届けられます。それから店頭に本が並べられて、ようやく一般の人が購入できるようになるのです。

しかし、ただこれだけのシステムでは有名な著作者の本は注文が入っても、あまり知られていない著作者の本はなかなか注文が入りません。そこでよく使われるのが「委託配本」という仕組みです。これは、新刊の発売時に書店に向けて一方的に本を送って、店頭に並べてもらうものです。

本は書店に並んで、多くの人に見てもらわなければ売ることができないので、この方法はよく使われます。しかし、これを書店側から見ると、毎日のように多くの本が送られてくるわけですからかなり大変です。そこで、こうした本の扱いを取りまとめて、書店の負担を減らしてくれるのが取次店なのです。

新刊の配本は、まず出版社から取次店に何冊配本したいかを伝えます。配本は基本的に1店舗に1冊ですが、取次店は蓄積したデータを基に、長年の勘と経験を生かしてどの店舗に何冊配本するかを決めます。こうして配本された新刊は、やがて少しずつ返品されるようになるので、それも取次店が取りまとめてくれます。

このように、取次店が行う委託配本制度があるおかげで、書店は在庫を抱えることなく多くの書籍を店頭に並べることができるのです。もし委託配本ができず、しかも仕入れ本の返品ができないとなると、書店は確実に売れる本しか仕入れなくなります。これでは著名な人の本しか売れないことになり、新たな作家や執筆者を発掘することが難しくなります。

そうなると出版業界全体が衰退することになるので、取次という独自のシステムが作られたのです。本は書店に並べてみないと、売れるかどうかわからないものも多いので、売れない本は返品可能にして、できるだけ多くの本を書店に置いてもらう必要があるのです。

出版取次の仕組み


出版取次は、出版社と書店を仲介する業務を行っています。出版取次は本を流通させるほかに、出版社の情報を書店に伝える役割も担っています。出版取次は出版社から本を仕入れて書店に配送し、同時に代金の請求と回収も行います。

つまり、出版社と書店の間に立って本を流通させるだけでなく、お金の動きも担当しているわけです。また、これ以外に書店から運営の相談を受けたり、出版社の販促を手伝うこともあります。さらに、本を流通させる上で必要になる各種情報を、出版社と書店に提供するのも出版取次の重要な仕事です。

全国にある出版社と書店はかなりの数にのぼりますから、取次店が得た情報をまとめて出版社、書店の双方に伝達することによって、本の流通をスムーズに進めることができます。出版取次店では、出版社から本を仕入れて書店に送る作業のほか、書店に出向いて販売促進を提案するといった営業も行います。また、本の流通に関する情報の収集と分析なども、取次の重要な仕事です。

出版業界には再販制度という独自のルールがあり、全国すべての書店がこのルールに則って本の販売をしています。再販制度とは、出版社が本の定価を決めて、各書店がその定価通りの価格で販売するという取り決めです。この制度があるおかげで、全国どこでも同じ価格で本が買えるのです。

一般の商品は店によって値引き販売されることがある中で、本だけは必ず定価で販売されるのは、再販制度があるからできることなのです。しかし、電子書籍の普及により、出版取次の業界も大きく変わろうとしています。それは、電子書籍を扱う書店が定額読み放題プランを始めたからです。

最近では、紙媒体の本の販売数は年々縮小傾向にあり、代わって電子書籍の販売が拡大しつつあります。そのため、最近では電子書籍を専門に扱う電子書籍取次店も出てきました。電子書籍は紙媒体の本と違って、物理的に商品を移動させる必要がないため、配本や返品の業務が不要なので大幅に業務内容が変わります。このため、長年続いてきた取次店制度も、大きな転換期を迎えようとしています。

取次は出版社に必要不可欠な業務


取次は出版業界においてなくてはならない重要な業務です。取次は出版社と書店の中間に立って、本の流通をスムーズにするために存在します。本には再販制度があり返品が可能なので、それらの煩雑な業務を一手に引き受けてくれるのが取次なのです。

取次店があるおかげで書店の負担が大幅に軽減され、数多くの新刊を書店に並べてもらうことができるのです。最近は電子書籍の普及により、取次業務も大幅に変わろうとしています。

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こちらの記事の監修者

自費出版の風詠社コラム編集担当 大杉剛

  • 株式会社風詠社代表取締役社長。
  • 1979年3月、早稲田大学第一文学部ロシア文学専攻卒業。
  • 畜産関係業界紙編集記者を経て、印刷会社でシャープ(株)の社内報編集を担当。
  • その後、東京および関西に本社を置く自費出版会社3社に勤務し、企画・編集した書籍は450点以上。2008年に株式会社風詠社を設立。自費出版の編集歴は30年以上。
  • コラムでは、読者の皆様や自費出版を検討されている方に、有益な情報をお届けすることを目標に執筆しています。

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