商業的な利益を目的とした企画出版
持ち込み企画や原稿が本になる
出版社で新しい本を作る場合、会議で編集者が企画を持ち寄って書籍や雑誌の記事を検討します。しかし、一部の出版社では、社外からの原稿や企画の持ち込みを受け付けています。社内では得られない斬新なアイデアや、専門性のある内容の企画を求めるためです。
外部スタッフから持ち込まれた原稿や企画を商業的に出版する形態を「企画出版」と言います。「商業出版」と呼ばれることもあります。持ち込まれた企画や原稿は、社内で厳しく審査や討議されます。採用の基準となるのは、ヒットするかどうか、つまり売れるかどうかです。既に類似した本が数多く出版されている本や、採算性のない本は却下されます。
原稿や企画の持ち込みの多くは、作家、ジャーナリストやルポライターとして活躍して実績のある人、編集プロダクションなどです。無名のライターや一般の人からの持ち込みもありますが、採用される確率は低くなります。
企画出版の制作や流通のコストは、すべて出版社が負担します。
自費出版の場合は著者が一部を負担することもありますが、企画出版の場合は、全額を出版社が負担します。したがって、出版社にとってはリスキーです。そのため、企画や原稿自体は持ち込まれたアイデアになりますが、具体的な出版では編集者が主導でプロデュースし、販売促進も積極的に行います。
企画出版(商業出版)の場合には、著者に印税が支払われます。その点で、著者が自分ですべての費用を担う
自費出版とは異なります。
出版企画書や原稿サンプルが必要
企画出版に応募する場合は「どんな本を作りたいのか」概略を明確にした出版企画書を提出します。場合によっては、途中まで書いた原稿があると説得力が増します。アマチュアの持ち込み企画は実現のハードルが高くなりますが、通過するためのポイントを解説します。
出版企画書に必要な項目は、ジャンル(小説などの文芸書なのかビジネス書なのか)、仮タイトル、企画の背景と意図、想定読者層、内容の概略、目次案、市場規模と類書(似たような本)との差別化、著者の略歴とPRなどです。とはいえ長々と書く必要はありません。A4用紙1枚~2枚程度に簡潔にまとめます。売れることが目的なので、競合となる類書の分析と差別化は徹底します。企画書の項目の中でも、仮タイトルは重要です。
あくまでも仮とはいえ、この部分を読んで一目で内容がわかること、キャッチーであることが求められます。ビジネス書では「○○のための7つの方法」などのようなタイトルがよく使われますが、使い古された印象の署名はインパクトに欠けます。話題になった著者の暴露本などでは、単語ひとつのタイトルも使われます。書店の書棚でベストセラーのタイトルをチェックすると参考になります。
タイトル案はひとつに絞り込む必要はありません。メインのアイデアの他に、代替案を複数提出すると可能性が広がります。メインタイトルとサブタイトルを組み合わせることによっても、読者に内容を想像させやすくなります。
著者のプロフィールもおろそかにできません。「何も書くことがない」と悩むかもしれませんが、少しでも魅力的に自分を演出する必要があります。いわゆるセルフブランディングです。実績があれば、数値を交えて解説すると説得力があります。また、失敗談や成功談のようなエピソードも注目される可能性があります。
なお、応募する際には著作権に注意しなければなりません。他の作品から盗用した場合は責任を問われるので、慎重に企画を立てましょう。
企画出版を実現するためには
現在、ブログやSNSが普及しています。自分自身のブログを持っているなら、そのコンテンツを活用すべきです。ブログに投稿した内容が注目されて、作家となったケースもあります。ライターの実績がなかったとしても、ブログの内容を見てもらえばどの程度の文章が書けるのか編集者に推測してもらえます。
アクセス数やフォロワー数などは、編集者を説得する資料のひとつになります。大勢のフォロワーがいるということは、潜在的なファンとして購買者を獲得しているということになります。企画を通す重要なポイントです。
マニアックな趣味や専門領域があると強みになります。文房具について徹底的に詳しかったり、スープのレシピを極めていたり、独自の趣味をテーマにすると出版後の本のイメージが明確になります。病気やリストラなどの困難な状況を乗り越えて活躍されているようであれば、同様の読者に共感を与える内容になります。
出版業界全体が現在、低迷した状況にあり、なかなか企画が通りにくいかもしれません。特に純文学やライトノベルは需要が飽和している傾向にあります。しかし、自分の本を作りたい熱意があれば企画出版に挑戦してみるのもよいでしょう。
出版社への売り込みなどのプロデュースを手助けしてくれる出版プロデューサーもいます。アイデアは持っていても企画書にできない、売り込む方法がわからないような場合は、出版社と人脈がある出版プロデューサーに支援してもらう方法もあります。