自費出版で楽譜を出版することは可能?費用相場はいくら?
楽譜を自費出版すれば、「自分の好きなデザイン・楽曲を選べる」「他の人と楽譜を共有できる」等のメリットがあります。
とはいえ自費出版の経験がある人は少なく、多くの人が「どのような手順を踏めばよいのだろうか」「コストはどのくらいかかるのだろうか」等の不安を感じがちです。
そこで本記事では、楽譜を自費出版する流れや費用・必要な手続きについてまとめました。他の音楽愛好家と共有したいオーケストラ譜やパート譜がある人は、ぜひ気軽に自費出版に挑戦しましょう。
楽譜を自費出版する流れ
自費出版はさまざまなテーマに対応しており、オーケストラ譜やパート譜を出版することも可能です。自費出版を検討している人は、出版までの大まかな流れを理解しておきましょう。
1. 原稿となる楽譜の準備
まずは出版したい楽譜を準備しましょう。楽譜は手書きでも問題ありませんが、簡単・きれいに作成したい場合は、楽譜製作ソフト「Finale(フィナーレ)」を使う方法があります。
Finaleとは、世界標準の楽譜製作ソフト。国内外の音楽愛好家達が使用していることで知られています。
楽譜作成に特化しているため、他のソフトにはない音楽符号があったり、楽譜を書きながら音を鳴らしたりが可能です。楽譜作成のニーズが一まとめになっており、思いどおりの楽譜を作れます。
2. 楽譜の浄書
楽譜の校正が終わったら、楽譜をプロに書き写してもらって版下を作ります。
「Finaleで作れば体裁は整っているから、浄書不要では?」と思う人もいるかもしれません。しかし浄書のプロは、音符の間隔から記号を打つ場所までこだわり抜いて楽譜を作り上げます。演奏したときの見やすさ・分かりやすさはソフトに勝るケースが多く、楽譜の仕上がりに大きな差が出るケースが少なくありません。満足のいく楽譜に仕上げたいなら、浄書の工程は省かない方がベターです。
浄書の費用は依頼する相手にもよりますが、1ページあたり2~4,000円程度と言われます。
3. 入稿用の楽譜データを作る
版下ができたら、出版する楽譜のデザインを決めます。個人で作る場合は高品質なレイアウト・ページデザインを実現する「InDesign」や「Illustrator」等のソフトを使うとよいでしょう。
一方自分で作るのに不安がある場合は、アウトソーシングでフリーランスデザイナーに委託してもよいかもしれません。
ただし、自分で作成したりアウトソーシングしたりすると、希望どおりのデザインにならない可能性があります。楽譜のデザインは非常に重要ですから、「全然自信がない」「イメージがわかない」という人は無理をせず、相談できる出版社を探すのがおすすめです。
4. 楽譜データを入稿する
楽譜のデザイン・レイアウトが完成したら、データを印刷会社に入稿します。本のサイズや紙質・ページ数等を決め、楽譜を発注しましょう。
基本的に入稿はPDFデータで行うため、紙を持って印刷会社まで出向く必要はありません。気になる点は電話やメールで相談し、担当者と密な意思疎通を図ってください。
5. 納品
印刷が終われば、依頼した部数の楽譜が指定場所に納品されます。この時点ですでに「配る」「売る」等を決めているでしょうから、必要な処理を行ってください。
「データを作ったりデザインしたり難しそう」という人は、全ての工程を任せられる出版社に依頼するのがおすすめです。原稿さえ渡せば、デザインから細かいチェックまで全て出版社が行ってくれます。
ただし出版社に依頼するときはそれなりの部数を注文しなければなりません。多くの場合「10部以上」というケースがほとんどで、少数部数は受け付けてもらえないでしょう。
コストと部数のバランスを見ながら「自分でやる」「出版社に依頼する」を決めてください。
楽譜を自費出版するときは著作権への対応が必要
楽譜の自費出版で特に気を付けなければならないのは、著作権問題です。自費出版の楽譜に載せたい楽曲がある場合、どのような対応を取るべきか紹介します。
1. 楽曲の無断使用は厳禁
すでに世に出ている曲の多くは著作権があり、無断で使用すると著作権法に抵触する恐れがあります。使用したい曲については、まず著作権を持つ個人・団体から使用許可を得ましょう。
日本の楽曲については、基本的にJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)が管理しています。
JASRACに著作権付きの楽曲の使用申請をして使用料を支払えば、「著作権管理コード」が付与されます。自費出版の楽譜にこれを記載すれば、その楽曲を使用しても問題はありません。
2. 楽曲の使用許可を取る手順
使用したい楽曲に著作権が付いているかどうかは、JASRACのホームページで検索できます。
楽曲に著作権が付いていた場合は、以下の手続きを行いましょう。
1. 著作権を所有する個人・団体を特定する
2. 著作権を所有する個人・団体から楽曲の使用許可を取る
3. 著作権料を支払う
一連の手続きはJASRACのホームページにて行えます。ホームページからJASRACに著作権使用の申請を行い、許可が下りたら30日以内に使用料を支払えばOKです。
ただし、JASRACで検索しても出てこない楽曲・外国の曲は、自身で著作権所有者を探して使用許可を得なければなりません。時間がかかる上手続きも煩雑なので、他の曲にすることも考えましょう。
なお、オールオリジナル楽曲を自費出版するのであれば、著作権を気にする必要はありません。
また、自費出版に対応する出版社によっては、JASRACの手続きも代行してくれます。時間がない・申請に不安がある人は、やはり出版社での自費出版がおすすめです。
楽譜を自費出版する際の費用相場
ここでは、出版社に依頼した場合の自費出版費用を紹介します。ただし楽譜の自費出版にかかる費用は、本の装丁・サイズ等によってまちまちです。
あくまでも「目安」程度に考えましょう。
1. ページ数・部数によって異なる
楽譜を出版社で自費出版した場合の費用は、楽譜の内容・ページ数・部数・紙質等によって大きく異なります。例えば以下は、以下の条件で出版を依頼した場合の費用です。
● 表紙4色・本文1色
● 表紙デザイン料・浄書代含む
● 表紙ビニール加工
● 縦型
● B5・A4
ページ数/部数 100部 500部 1,000部
24 25~30万円 43~50万円 48~55万円
40 36~42万円 60~67万円 65~75万円
56 46~55万円 67~80万円 80~95万円
ただし楽譜の内容・本の仕様によっては、上記の金額から掛け離れる可能性もあります。正確な料金については、出版社に相談してみるのがよいでしょう。
2. 見積もりを取るときに伝えるべき情報
楽譜を自費出版するときは、事前に見積もりを取って詳細な金額を確認しましょう。このとき出版社に以下の情報をつたえなければなりません。
● 原稿の内容
● 部数
● 判型
● 出版社にデザインを依頼するかどうか
● 表紙・本文の印刷色数
● 著作権の有無
この他納期の希望や注意点がある場合も、きちんと伝えておきましょう。
【まとめ】
プロに任せれば楽譜の自費出版はスムーズ
楽譜を自費出版する場合、著作権保護法がネックとなります。自分で作詞・作曲したもの以外を出版する場合は、JASRACで使用申請や使用料の納付を行いましょう。
自費出版のノウハウがゼロの場合、理想の楽譜を出版するのはややハードルが高いかもしれません。デザインやデータ加工のスキルがない場合は、自費出版を請け負う出版社に相談するのが安心です。
親身になって話を聞いてくれる出版社なら、予算・納期の希望にも融通を利かせてくれます。1人であれこれと悩む前に、思い切って相談してみてはいかがでしょうか。